木造建築に比べた軽量鉄骨のメリット

工期とコストの安定性

乾式工法が中心となる軽量鉄骨は、工場で構造体をミリ単位に精度管理しユニット化して搬入するため、雨季や台風シーズンでも現場作業が中断しにくく、木造より約1~2割短い工期で引き渡しが可能です。鋼材価格は国際指標に連動しているものの流通量が豊富で、品薄による急騰が少なく、近年高騰する製材コストの影響を受けにくい点も長所として挙げられます。基礎は浅く済み、クレーンも小型で足りるケースが多いため、施工中の仮設費や人件費を抑えた資金計画を立てやすく、キャッシュフローが安定させられます。

耐久性・防火性の向上

木材は湿気やシロアリの影響を受けやすく、定期的な薬剤処理や補修が欠かせません。一方、軽量鉄骨は防錆塗装と溶融亜鉛メッキで長期耐候性が確保でき、腐朽や害虫による劣化リスクが大幅に低減できます。そして、鉄は不燃材料であるため、屋内消火設備の仕様を簡素化でき、内装制限や保険料の面でも有利です。準耐火構造の基準をクリアしながら被覆厚が抑えられるため、有効天井高を確保しつつ、保守更新にかかるライフサイクルコストが削減できます。

空間設計の柔軟性

軽量鉄骨の部材は高強度ながら断面が細く、木造で必要となる太い柱や梁成が省けるため、長スパンの無柱空間や高天井が手軽に実現できます。事務所ではフリーアドレスや大会議室など多様な働き方に対応しやすく、倉庫ではラックの高さを最大限確保できるため保管効率が向上します。ボルト接合主体のため内部区画の改変が容易で、将来的なレイアウト変更や用途変更にも柔軟に適応できます。スケルトン・インフィルを前提にすると、テナント入替時の廃材も大幅に削減可能で、環境負荷低減にも貢献します。

環境性能と維持管理

鉄骨は繰り返しリサイクルが可能で、解体後も資源価値を失いません。製造時のエネルギー投入量は高いものの、使用量が少ない軽量鉄骨はトータルでCO2排出量が抑制できます。高性能断熱パネルや省エネ設備と組み合わせることで、木造と同等の温熱環境を確保しながら光熱費が削減できます。防錆塗装の再施工は20~25年ごとが目安ですが、薬剤散布や構造補強の頻度が少なく済むため、長期運営時の環境負荷とコストが同時に低減できます。また、LCA・ZEB認証などサステナビリティ指標への適合も容易で、企業価値やブランドイメージ向上に寄与します。